KUBS – 九州大学境界研究について

概要

九州大学ボーダー・スタディーズは、境界をめぐる様々な物質的・概念的挑戦を受けそれに対応するための学際的研究ユニットです。

KUBSは、次のことを研究目的としています:

  • 国境、またそのほかの境界が、グローバル化と結びついた要因によってどのような影響を受けているかを解明します。
  • 日本におけるアジア太平洋、または世界各国に対して行われている境界研究を紹介し、このような関心に携わる研究者間のネットワークを発展させます。
  • 日本における境界研究を発展させ、独自の学術的研究分野として推進します。
  • 政策提言に必要な知識を深め、学界と政策決定者間の知識を共有します。
ボーダー・スタディーズ(境界研究)
境界研究という概念は、様々なレベル・規模における社会構造内に存在する亀裂や区別を分析することを示します。最もわかりやすいのは、異なる国家間に存在する境界(国境)、つまり、二つの国家体制の間における領域的・心理的な分裂について分析することです。今日における境界研究は、20世紀中盤、1960年代から1970年代にかけて出現した多数の新たな国民国家から始まった国境に関する研究であり、その後70年代半ばからは、政治地理学の分野からより科学的なアプローチを構築しようとする努力によって更なる発展を遂げました。そして、20世紀の末には、地理学者、政治科学者、社会学者、人類学者、心理学者、民族学者、法律家、経済学者、そして科学技術専門家までを取り込んだ境界研究のコミュニティーが形成し始めました。

境界研究分野の広がりは、研究者たちの当初の主な関心であったアメリカ-メキシコ国境あるいはソ連崩壊後のヨーロッパ内における国境から、地理的多様性に至りました。さらに、境界とは、単なる主権国家内、もしくは主権国家間における主権的・司法的な決定によるものだけではなく、より広義的な意味と関連性を持つ概念として使われるようになりました。

その結果、境界研究や境界に対する理解は、更なる広がりを見せ発展しました。この境界の概念は、存在する人々が暮らす空間における差異や区別を示しています。境界研究は、いかにしてこれらの区別が生じるのか、それがどのように変化するか、そしてその区別をめぐる争いを解決するメカニズムを明らかにすることを目的としています。そのような境界によって分断された人々や、双方にまたがって暮らす人々は、ある場所においては、自分と他者を区別する明確な意識を持ちえますが、他の場所ではこの区別が曖昧になることもあります。

境界研究は誕生から30年余り経過しましたが、その発展を推し進めてきた一連の学術雑誌や学会も多くあり、新たな学問分野として発展し続けています。同時に、この分野を発展させようとする多くの研究者は様々な研究分野から構成されており、結果として、境界研究は、実に多様なアプローチを取り入れた研究分野となりました。その政治的、経済的、社会的、そして認識論的効果が期待されていることから、今後も更に発展し続けていくことを確信しています。

日本における境界研究
今日、境界に焦点を当てた国際学会や組織は多数存在します。その主な組織として、北米で組織化され、後にヨーロッパにおいても発展し続けるAssociation for Borderlands Studies(ABS)、そして冷戦直後にヨーロッパで生まれ、現在ではラテンアメリカとアジアにも拡大していくBorder Regions in Transition (BRIT)が挙げられます。一方、アジアのAsian Borderlands Research Network(ABRN)のようなネットワークは、アジア大陸における境界研究の台頭や拡大を物語っていますが、主な地理的関心が東南アジアに集中しています。同様に、日本は、特にアジア地域の境界に関する優れた研究が多くその歴史も長き渡りますが、世界の境界研究コミュニティーとの連携やネットワーク構築は不十分でした。このことがきっかけとなり、2008年から北海道大学スラブ研究センターにおいてグローバルCOEプログラム「境界研究の拠点形成」が設立されました。

現在、日本における境界研究の国際的な認知度は、この北海道大学グローバルCOEプログラム後にその意志を継ぐために設立されたEurasia Unit for Border Research (UBRJ)を中心に、急速に上がっています。UBRJを支援する形で、日本の境界地域に位置する地方自治体である根室、稚内、小笠原諸島、対馬、与那国と研究機関やシンクタンクの連携を図っている Japan International Border Studies Network (JIBSN)も、多大な貢献をしています。さらに、 近年のレジャー業界におけるボーダー・ツーリズムへの関心を活用するため、また境界地域の再生支援のためにNPO法人「国境地域研究センター (JCBS)」も2014年に発足しました。これらの組織との連携を基盤にして、アジア太平洋未来研究センター(Center for Asia-Pacific Future Studies)の境界研究モジュールは、ますます拡大し発展を遂げている境界研究のネットワークの一つの核となることを目的とし、日本、さらにはアジア太平洋地域の境界研究に焦点を当てることを試みます。また本センターは、そのメンバーらがカナダに拠点を置く研究ネットワークBorders in Globalization (BIG)の日本代表を務め、ABSの日本部会(Japan Chapter)の事務局を務めていることから、グローバルなネットワークとも密に連携を取っています。